目標を達成し続けるリーダーの部下を育てる7つの基本
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目標達成し続けるリーダーの「部下」を育てる7つの基本
第1章 部下との「スタンス」を見直す【2】
「自分と部下の価値観は異なることを理解する」
30代の頃、私は仲間と一緒に会社を設立しました。その当時、私とは正反対のタイプの部下がいたのです。
私は「走りながら考える」タイプの人間。きっちりと計画を立てるより、まずはこの足で動いてみる。そして、試行錯誤しながら解決方法を見つけ、最短距離で目的を達成するのが常です。一方、その部下は「石橋を叩いて、最終的には渡らない」というタイプ。慎重で、コツコツと実績を積み上げるような人でした。部下は、突っ走る私にブレーキをかけるような存在とも言えるでしょう。
今思えば、その部下のおかげで冷静さを取り戻せたこともあったと思います。しかし、当時の私には、仕事の勢いに水を差すように感じられたのです。しかも、部下の意見は筋が通っていて、私より正論のことが多かったのが、また腹の立つところでした(笑)。
それで、私はその部下に不満を抱くようになりました。平たく言えば、やることなすことが気に入らなかったのです。
あるとき私は、社外の知人に相談しました。彼は、本当に聴き上手な人。私の中にたまっていた部下に対する不満を、上手に引き出してくれました。私はお酒が入っていたこともあり、30分くらい愚痴をこぼしていました。そんなとき、突然彼はこう言い出したのです。
「大林さん、最近、泣いたことある?」
私には、彼の発言の意図が分かりませんでした。
でも、私は彼の言葉に従って、涙した経験を思い出してみたのです。
ちょうどその飲み会の直前、海外出張へ向かう飛行機の中で映画を見て感動したので、私はその話をしました。彼は、うんうんと頷きながら、楽しそうに聴いています。
私が泣いたのは、主人公がケーキを持って幼い娘の元へ走るシーンでした。主人公の気持ちがとても伝わってきて、涙が止まらなくなったのです。隣に座っていた同僚が爆睡していたのをいいことに(笑)、私は暗くなった飛行機の中で、声を殺して号泣していました。
私が一通り話し終わると、彼はぽつりと言いました。
「その部下の方はきっと、同じ映画を見ても、違うシーンで泣くんだよね」
哀しみであれ感動であれ、価値観の根幹に近いところに触れたとき、人は涙しそうになるというのが、彼の意見でした。人によって、涙するところは微妙に違います。同じ映画を見ても、私が泣く場面と、部下が泣く場面が全て同じとは限りません。それはつまり、個人の価値観は千差万別だということです。
彼は、涙という切り口から、私と部下では根本的な価値観が違うということを分からせたかったのです。
人は、自分の持っている価値観が全てだと思いがちです。ですから、自分の価値観に合わない人に対して、いらだちを感じてしまうのです。
しかし、人は十人十色、異なる価値観を持っているのが当たり前だと考えることができれば、いらだちは消えます。そして、互いに認め合いながら、コミュニケーションを取ることが可能になるのです。
私自身も、「その部下は、私とは違う価値観の持ち主なのだ」と考えた瞬間、ストレスがすっと消えてしまいました。それまでは、「なんで俺と同じ仕事の進め方をしないのだろう」と腹を立てていたのですが、「部下には部下のやり方があるよね」と、冷静に受け入れられるようになったのです。
人によって価値観は違います。また環境の変化によってその価値観も変わったりします。まずは、異なるということを受け入れて、それぞれの個性を広い心で認められれば、一歩進んだ部下指導ができるようになるでしょう。
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互いに感謝し合える関係をつくる
第1章 部下との「スタンス」を見直す【3】
この記事は、2014年発刊の大林伸安・著である書籍「目標達成し続けるリーダーの「できない部下」を「デキる部下」に変える7つのこと (アスカビジネス) 」を基に、メールマガジン「ノビテク通信」向けに再編集、配信した「目標達成し続けるリーダーの「部下」を育てる7つの基本」です。内容や名称、肩書きなどは当時のままとなっておりますことご了承ください。