目標を達成し続けるリーダーの部下を育てる7つの基本
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目標達成し続けるリーダーの「部下」を育てる7つの基本
第1章 部下との「スタンス」を見直す【3】
「互いに感謝し合える関係をつくる」
人には、他人から認められたい、ほめられたい、感謝されたいという「承認欲求」があります。これは、食べたい、眠りたい、安全な暮らしをしたいなどと並んで、人間の基本的な欲求とされています。
眠れなかったり、暮らしの安全が脅かされたりすると、私たちはストレスを感じます。
そして同様に、人から認められない環境におかれてもストレスを感じるのです。
逆に、周囲の人から感謝や賞賛の言葉をかけられると、やる気がみなぎり、前向きな気持ちが湧きます。
私の友人が経営している会社では、毎日「感謝の朝礼」を行っているそうです。経営者も含めた全員で毎朝1時間以上かけ、一人ひとりが昨日の感謝を伝えています。
最初に見たときは、「これほど長い時間を費やして大丈夫なのか?」と思いました。しかし、全従業員が生き生きと働き、組織全体が強い絆で結びついている様子を見ると、効果が上がっていることがよく分かるのです。「感謝の言葉」が秘めるパワーは、なかなか侮れません。
私自身にも、「ありがとう」という言葉の大切さを痛感したエピソードがあります。
会社を設立して間もない頃でした。当社が担当していた大プロジェクトが終わり、お客様と当社の社員が一緒になって打ち上げを行いました。みんなで盛り上がっていると、突然、背中越しに、お客様と当社の従業員の会話が漏れ聞こえてきたのです。
「御社の大林社長ってどんな人ですか?」
話題の当事者としては、全神経を集中して聴かざるを得ない状況(笑)。私は、横に座っていた人の話など上の空。彼らの会話に耳を傾けました。
質問を受けたうちの社員は、「うちの社長はすごいんですよ」と答えました。
お客様「へぇ~、どんなところがすごいんですか?」
私の心の声(どんなこと言ってくれるんだ?仕事ができるとか、意思決定が速いとかかな……。ワクワク、早くほめてくれ!)
うちの社員「うちの社長はね、朝コーヒー入れてあげたときに「ありがとう』って言ってくれるんですよ!」
私は思わずずっこけました(笑)。そして、表情には一切出さないまま、心の中で「おいおい、そんなことかい!」とツッこんだわけです。
しかし、後で振り返ってみると、これはかなり大事なことだと考え直しました。
部下は、リーダーの一挙手一投足を、意外と細かく見ています。そして、
上司が部下に感謝の念を抱いていることを、深く心に刻んでいるものなのです。
部下に用事を頼んでやってもらうことを「当たり前」だと捉え、感謝の一言も発しない上司もいます。しかし、これではいけません。部下に感謝を伝え、照れずに「ありがとう」と伝えることで、あなたと部下の関係や、職場の雰囲気を大きく変えられるでしょう。
全メンバーが「ありがとう」と言い合い、感謝の気持ちが伝わっている職場は、互いにカバーし合うことができます。
野球で言えば、サードとショートの間に飛んだ三遊間のゴロを、お互いに声をかけながら上手に守るようなものですね。一方、「人に何かをやってもらうのが当たり前」と考え、同僚への感謝の気持ちが薄い職場では、三遊間のゴロに飛びつく人はいません。そうした雰囲気の差が、チームのパフォーマンスを左右するのです。
どんなに口べたな人でも、部下とふれ合う中で「ありがとう」と伝えるのは、決して難しいことではないはずです。そこで、1日に何度、部下に「ありがとう」と言ったか数えてみましょう。もし、ゼロ回、あるいはごく少数しか言っていないようなら要注意。意識して、昨日より数多く「ありがとう」を伝えるようにしましょう。
職場の中に、「ありがとう」を言うタイミングは溢れています。部下の行為を「当たり前」と思わず、「ありがとう」と言葉に出すのが当たり前という考え方を、ぜひ、自分のものにしてください。
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部下が自分に何を期待しているのか、把握する
第1章 部下との「スタンス」を見直す【4】
この記事は、2014年発刊の大林伸安・著である書籍「目標達成し続けるリーダーの「できない部下」を「デキる部下」に変える7つのこと (アスカビジネス) 」を基に、メールマガジン「ノビテク通信」向けに再編集、配信した「目標達成し続けるリーダーの「部下」を育てる7つの基本」です。内容や名称、肩書きなどは当時のままとなっておりますことご了承ください。