目標を達成し続けるリーダーの部下を育てる7つの基本
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目標達成し続けるリーダーの「部下」を育てる7つの基本
第1章 部下との「スタンス」を見直す【5】
「感情的になった部下を受けとめる」
突然ですが、ここで問題です。
あなたは、ミスをした部下と面談をしています。すると突然、部下が「全責任は私にあると認めます。だから、もう面談は終わりにしましょう」と言い出しました。
さて、あなたは
A・潔い態度をほめる
B・私はそうは思わないと伝えた後、自分の意見を述べる
C・休憩を取った後、もう少し話し合おうと提案する
D・コメントは避け、別の機会にもう一度話し合おうと提案する
のうち、どの行動を選びますか?
まず考えなければならないのが、部下の心理状況です。ビジネスの現場では、誰かが100%悪いという状況はまず起こりえません。それなのに「私が全部悪い」と言い張っているのは、部下が感情的になっているからでしょう。平たく言えば、やけになっているのです。おそらく部下は、自分が全て悪いなどとはかけらも思っていないでしょう。
ですから、Aの選択肢は論外。部下は「この上司は私の気持ちを全く分かってない」と判断し、ますます態度を硬化させてしまいます。
さて、B、C、Dは、どれも「部下の頭が冷えるまで待つ」という方法。
Bはごく短時間、Dはかなりの期間をクールダウンにあて、Cはその中間というところです。
実は、正解はC。Bのように、間髪入れずに逆の意見を述べると、部下の気持ちはヒートアップする一方です。逆にDでは時間を置きすぎ。ささくれた気持ちのまま何日も過ごすうちに、部下の反発心は固定化されてしまうでしょう。その点、少しだけ「間」を外すCが、一番効果的なのです。
感情的になった人を力でねじ伏せようとするのは、最も愚かな対処法です。
お互いの感情を真正面からぶつけ合えば、立場の強い上司の方が勝つに決まっています。上司は、部下に言うことを聞かせることができて、自己満足に浸れるかもしれません。しかし、部下は不満をため込み、上司の言うことなど聞かなくなってしまうでしょう。
それよりは、部下の感情をほんの少しだけ外してやる方がいいのです。例えば私は、部下とぶつかりそうになったとき、「ところで、俺はこれからコーヒーを買ってくるけど、ミルクいるか?」と聴くようにしています。一見すると、前後の脈絡のない会話です。
でも、もし「ミルク、お、お願いします……」と答えてくれれば私の勝ち。部下は怒りを忘れて普段の会話に戻ってくれます。また、部下の気持ちが収まらずに「いりません!」と返されても、そこでへこたれてはいけません。さらに「じゃ、俺が買ってくるからな」とたたみかければ、そこで大概の人はあきらめて「お願いします……」と受け入れます。
ある研究によれば、怒りの感情が持続する時間はせいぜい数分程度だそうです。その間だけ時間を稼げれば、相手の気持ちも多少は和らぎます。ここで大切なのが、相手と正面からぶつかるのを避けること。相撲にたとえれば、正面からがっぷり四つに組むのではなく、相手をいなして力をそぐ方がいいのです。
あるいは、部下と話す際の立ち位置を変える手もあります。相手の正面に立ったり座ったりすると、どうしても意見がぶつかってしまいがちです。そこで、
相手の斜め横(90度の位置)に座ってみるのです。
すると、互いの意見がぶつからず、部下の気持ちに寄り添って意見を聴くことができます。
デートのときは、向かい合わせの席に座るより、横並びになる方が互いに親しくなれると言います。部下と感情的にぶつかりそうになったら、この方法を応用してもいいでしょう。
部下との関係がうまくいっているときは、互いに素直な形でコミュニケーションをすればいいのです。
しかし、ひとたびこじれたときは工夫が必要です。変化球を投げたり、たまにはピッチャーマウンドを外したりして、「間」を取りましょう。そうしてリズムを変えれば、感情的になっていた部下も冷静さを取り戻せます。
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部下のタイプを大雑把につかむ
第1章 部下との「スタンス」を見直す【6】
この記事は、2014年発刊の大林伸安・著である書籍「目標達成し続けるリーダーの「できない部下」を「デキる部下」に変える7つのこと (アスカビジネス) 」を基に、メールマガジン「ノビテク通信」向けに再編集、配信した「目標達成し続けるリーダーの「部下」を育てる7つの基本」です。内容や名称、肩書きなどは当時のままとなっておりますことご了承ください。