目標を達成し続けるリーダーの部下を育てる7つの基本
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部下にとって初めての不安な業務。あるいは本人の意に100%沿った配属ではなかった場合。「モチベーションを高く持て」と説いても成果は期待できないでしょう。代わり本人に「やれる」「できる」と自信を持ってもらうアプローチがあります。それが「小さな成功体験を積ませる」方法です。
目標達成し続けるリーダーの「部下」を育てる7つの基本
第5章 部下に「成長」したことを感じてもらう【2】
「小さな成功体験を積ませる」
ある企業で、職種転換の研修を担当したことがあります。相手は、製造部門や管理部門などに所属していた、40~50代の社員。彼らを営業職に配属させるため、研修をすることになったのです。
彼らは全員、営業未経験でした。また、営業部門への配属は彼らの希望ではなく、会社の都合によるもの。そのため、モチベーションは最低でした。
研修会場には、「なんで私が営業なんかしなきゃいけないんだ」というオーラが充満。
研修の初日は、ほとんどの受講生が斜に構えて講義を受けていたのです。
研修講師は、魔術師ではありません。意欲のない研修生をやる気にさせるための特効薬など、持ち合わせてはいないのです。
そこで私は、「小さい成功体験を数多く積ませること」を突破口にしました。
ある小学生向けの補習塾では、成績の悪い生徒にあえてやさしいテストを受けさせるそうです。
例えば、テストで30点しか取れない小学4年生がいたら、2年生向けのテストを出題する。そこで100点を取れたら、弱点を教えた後、今度は3年生向けテストを受けさせる。さらに100点を取れたら、小学4年生のテストを再出題するのだと言います。こうすることで、生徒に自信を持たせながら、難易度を上げていくのです。
私が研修で行ったのも、同じようなことでした。
まずは、名刺交換のやり方など、ごく初歩的なことを教えました。その研修生たちは製造部門に所属し、名刺交換すらしたことのない人たちだったので、最初はまごついていました。しかし、やり方をひとつひとつ教え、実際にできるようになると、彼らの態度が徐々に前向きなものに変わってきたのです。
彼らは慣れない営業部門への配属が決まり、「こんな歳になって、未経験の営業なんてできるのかな?」と不安を感じていたと思います。こういう状況で、やる気を出せと言う方が間違いでしょう。
しかし、名刺交換ができるようになり、営業トークもだんだんと上達していくうちに、「あれ、私にも営業ができるんじゃないか?」という気持ちが芽生えてきました。いわば「やれる気」が膨らんできたのです。すると、恐れる気持ちがだんだんと薄れて、「やる気」が生まれてきました。
人を指導するときは、いかに自信を持たせてやるかが重要です。自信を持ち、「やれる気」が大きくなれば、それが「やる気」につながります。
登山初心者をいきなりエベレストに連れていったら、確実に挫折します。そして自信を失い、二度と登山などしたくないと思ってしまうでしょう。
一方、簡単に登れる山からチャレンジし、登頂成功を重ねていけば、自信はどんどん大きくなります。そして、いつかはエベレストに登頂できるかもしれません。 仕事でも同じことが言えます。
営業職の部下に対しては、営業の仕事を「あいさつ」「提案」などのように、小さく分解してやりましょう。もし、今の段階では成果が出ていなかったとしても、「お客様へのあいさつは元気よくできるようになったな」「提案は分かりやすくなったじゃないか!」などのように、小さい部分はほめてやれます。そうすると、部下は成長している実感=「やれる気」が持てるのです。
以前、離職率の高い会社で、若手社員にアンケートを取ったことがあります。その際、「仕事が楽しいのはどんなとき?」という質問をしたのですが、ダントツで多かった答えが「成長を感じられたとき」でした。
仕事が多少ハードでも、自分が伸びていると実感できれば、仕事は楽しめるものなのです。
しかし、自分が成長できているかどうかは、本人には分かりづらいものです。だからこそ、上司がしっかりと「あなたは○○ができるようになったよ」と、伝えることが大切。そうすれば、部下は成長感を得られて自信が持てるのです。
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言葉や行動の裏にある感情を拾う
第5章 部下に「成長」したことを感じてもらう【3】
この記事は、2014年発刊の大林伸安・著である書籍「目標達成し続けるリーダーの「できない部下」を「デキる部下」に変える7つのこと (アスカビジネス) 」を基に、メールマガジン「ノビテク通信」向けに再編集、配信した「目標達成し続けるリーダーの「部下」を育てる7つの基本」です。内容や名称、肩書きなどは当時のままとなっておりますことご了承ください。