目標を達成し続けるリーダーの部下を育てる7つの基本
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責任感のある真面目な部下。任された仕事に一生懸命取り組んでいるけれど、最近余裕がない。そんな時は、選択肢を与えるといった指導もあります。そのやり方と注意点をお伝えします。
目標達成し続けるリーダーの「部下」を育てる7つの基本
第6章 部下の「内省」を促す【6】
「余裕がなくなった部下に仕事を手放させる」
成功した経営者は、よくこんなことを言います。
「手の中に入っているものを手放すと、新しいものを手に入れられる」
これは、水泳の息継ぎの原理に似ています。息継ぎをするときは、やみくもに空気を吸おうとしても、うまくいきません。
しかし、口を水面の上に出し、肺の中の空気を吐いてしまうと、新鮮な空気が自然に入ってきます。
何かを得ようとしたら、古いものを捨てることが効果的なのです。
部下には、ときに仕事で手一杯になり、精神的・時間的な余裕がなくなることがあります。すると、頭に情報が入らなくなり、視野が極端に狭くなってしまいます。
これは部下を育てる上で、決して好ましい状態ではありません。新しい知識が、全く入らない状態になってしまうからです。
そうしたときに使えるのが、「思い切ってやめてみるか」という言葉です。
例えば、ある企業への営業が暗礁に乗り上げてしまったと仮定しましょう。いろいろな手を試しましたが、契約を取れる見通しは全くありません。
部下は頭を抱えて何も考えられない状態が……。
こういうときに、「この案件、やめてもいいんだぞ」と声をかけてやるのです。
すると、部下は気持ちに余裕が生まれます。
今までさんざん苦労してきた案件を放棄していいと、上司からお墨付きをもらえたのですから。
そして、心が楽になると、いい意味で開き直って、別の角度から名案が生まれたりする可能性もあるものです。
何も、本当にやめる必要はありません。
ただ、「やめる選択肢」を部下に与えることで、部下を落ち着かせることができます。
状況に合わせ、あるプロジェクトの一部だけを他の人・企業に頼む「これだけはここに頼んでみよう」とか、難航している部分だけを先送りする「これは後に回そう」なども使うといいでしょう。
とにかく、余裕がなくなって凝り固まってしまった部下の思考を、思い切った選択肢を提示することで緩めてやるのです。
このやり方は、きまじめなところがある部下によく効きます。
仕事はきっちりこなすが、ちょっと柔軟性に欠けたタイプですね。
彼らの凝り固まった固定観念を1回崩させる伝家の宝刀と言えるでしょう。
特に、このままだと精神的につぶれてしまうかもしれないと感じたときは、こういうカードを切ると効果があります。
気をつけなければいけないのは、このカードを切るのは、よほど余裕がなくなってどうにもこうにもならなくなったときだけ、ということです。
あまり安易にこのカードを切ると、部下はすぐにあきらめてしまう悪い癖をつけてしまう危険性もあります。
また、上司に仕事を取り上げられたような気持ちにさせないことも大切です。
「自分はダメなんだ」と自信を喪失させてしまっては、本末転倒。
最後まで責任を持って任せるが、逃げ道をつくることで、心の余裕をつくり、状況を打開させることが目的です。
最近は何でも自分で抱え込んでしまう部下が少なくありません。
まじめで、責任感が強いのでしょう。しかし、組織はチームで仕事をしています。
チームで連携するから、仕事の相乗効果が生まれるのです。
部下の方から、上司や先輩にお願いするのは、なかなかできることではありません。
そんなとき、リーダーである私たちから、その仕事を「手放させる」投げかけをすることも、ときには重要です。
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部下に目標を設定させる
第7章 部下の「可能性」を広げ、目標達成させる【1】
この記事は、2014年発刊の大林伸安・著である書籍「目標達成し続けるリーダーの「できない部下」を「デキる部下」に変える7つのこと (アスカビジネス) 」を基に、メールマガジン「ノビテク通信」向けに再編集、配信した「目標達成し続けるリーダーの「部下」を育てる7つの基本」です。内容や名称、肩書きなどは当時のままとなっておりますことご了承ください。