目標を達成し続けるリーダーの部下を育てる7つの基本
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短期的な成果を求めるときは、管理職が自分で成果を出すほうが早く、確実に思われます。しかし、長期的観点ではどうでしょうか?「チームや部門全体のパフォーマンスを高める」仕事が疎かになります。部下を育て、チームの底力を伸ばすには、管理職は部下に経験を与えることが必要です。
目標達成し続けるリーダーの「部下」を育てる7つの基本
第7章 部下の「可能性」を広げ、目標達成させる【3】
「部下の自主性を大切にする」
管理職は、当然のことながら、部下より経験豊富です。
スキルの面でも、部下たちを上回っていることが多いでしょう。
そのため、仕事が遅く、なかなか成果を出せない部下を見ていると、「私がやった方が早い」とイライラすることもあると思います。
中には、部下から仕事を取り上げて自分で処理してしまい、「な、オレがやった方が何倍も早かっただろ?」とドヤ顔をしている人もいます。
特に、期末が近づいてくると、こうした傾向は強くなるようです。
営業部門の管理職なら、部下が担当している案件を横から奪い取り、自分で手がけた方が、目先の目標達成に近づけます。
また、総務や人事といった部門でも、経験の浅い担当者の仕事を管理職が引き受ける方が、効率よく仕事を処理できるかもしれません。
気持ちは分かります。仕事は山のようにあるし、達成しなければならない目標もあるでしょうから。
しかしそれでは、部下はいつまでたっても成長できないままです。
キャリアデザイン、マネジメントの研究で有名な神戸大学大学院経営学研究科教授の金井壽宏さんは、著書の中で「7・2・1の法則」を紹介しています。
これは、従業員のリーダーシップを育てる上で役立つ経験の比率のこと。
リーダーとしての能力を伸ばすのは、現場での仕事経験が7割、上司や先輩、取引先など周囲でリーダーシップを発揮している人からの影響が2割、研修やセミナー、勉強会などで学べるのが1割だと言うのです。
私は、研修やセミナーを主催している企業の経営者なので、「なんだよ、たった1割しかないのか」と不満な面もあるのですが(笑)、これは、厳然とした事実。
人は、現場経験を積み重ねることで、はじめて成長できるのです。
つまり、部下から仕事を奪ってしまうと、部下がリーダーとして成長できる効率は、7割以上も落ちてしまうわけです。それゆえ、部下はいつまでも「できない部下」のまま。短期的に業務効率が上がったとしても、長期的に見れば、チームの底力は伸びません。
これでは、部門全体のパフォーマンスを高めなければならない管理職としては、完全に失格です。
人が成長する際に重要なのは、現場で経験してさまざまな気づきを得て、さらに上司などからフィードバックをもらって内省することです。
ですから、部下から仕事を取り上げては絶対にいけません。
目先の業務効率が多少落ちても、歯を食いしばって部下に仕事を任せなければならないのです。
考えてみてください。あなた自身も、若くて経験の浅かった頃は、仕事が遅かったはずです。
しかし、上司や先輩に見守られながら、自分で仕事をひとつひとつこなすうちに、能力を高めていったのではないでしょうか。
ところが、自分がリーダーになると、その恩を忘れてしまう。これは困ったことです。
私個人としては、部下を成長させるために、一度くらい部門の目標達成をあきらめてもいいのではないかと思います。
もし、上司から責められたら、「今期は部下を育てるため、あえて目標達成をあきらめました。しかし、次期では必ず、今回の未達成を取り返す働きをします」などと説得すればいいのです。
そうやって、短期的な目標達成より長期的な人材育成のメリットを説くのも、管理職の役割です。
プロ野球チームにも、高いお金を出して外部から選手をかき集める球団があります。
各チームの四番バッターとエースピッチャーを並べた陣容は、やはり壮観です。
ただ、 そうしたチームは生え抜き選手の育成を怠ってしまうため、世代交代に失敗する傾向が強いのです。
そして、引き抜いた選手が年を取って衰えると、とたんに戦力が落ちてしまいます。
目先の結果を欲しがりすぎ、長期的な育成計画を放棄したチームは、いつか没落します。
一方、短期的な苦しい思いをしても、辛抱強く若手を育てたチームは、やがて花開くものです。
あなたも辛抱して若手に仕事を任せましょう。
そうすれば、豊富な経験を通じ、部下は成長できるのです。
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部下に教えることを経験させる
第7章 部下の「可能性」を広げ、目標達成させる【4】
この記事は、2014年発刊の大林伸安・著である書籍「目標達成し続けるリーダーの「できない部下」を「デキる部下」に変える7つのこと (アスカビジネス) 」を基に、メールマガジン「ノビテク通信」向けに再編集、配信した「目標達成し続けるリーダーの「部下」を育てる7つの基本」です。内容や名称、肩書きなどは当時のままとなっておりますことご了承ください。