目標を達成し続けるリーダーの部下を育てる7つの基本
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部下に期待して大きな仕事を与えても「自分にはできません、限界です」と辞退されたことはありませんか?「仕事の要求度コントロールモデル」を参考に、部下のパフォーマンスを引き出し、ストレスをマネジメントしてあげましょう。
目標達成し続けるリーダーの「部下」を育てる7つの基本
第7章 部下の「可能性」を広げ、目標達成させる【5】
「部下に権限を委譲する」
以前、ある部下にかなり難易度の高い仕事をいくつか担当させました。
もちろん、その部下には、期待していましたし、これからさらに成長して欲しいと強く思ってのことでした。
プレッシャーも相当だったと思います。
かなりハードワークになっていたことは、薄々感じていました。
それでもこれは彼の成長の機会だからと、自分に言い聞かせ、任せておきました。
しかし、あるとき、その部下から、「もう限界です。自分には無理です」と言われてしまいました。
「もう限界です。自分には無理です」と部下が言ってくるのは相当なことです。
私自身もかなり動揺したことを覚えています。
こんなとき、すぐにあきらめて、部下の仕事の要求度を下げるという選択肢もあります。
ただ、仕事の要求度を下げるというのは、部下の自信を失わせることにもなりますし、部下の成長にもつながりません。
悩んで、考えた末に、思い切って「仕事の要求度」を下げるのではなく、彼には、自分で決めることのできる「裁量」を大幅に増やし、権限を委譲しました。
もちろん、裁量を増やしただけでは、彼の不安は解消できません。
そこで、彼には、今まで以上に上司である私が「側面支援」するからという約束をしました。
最初は半信半疑でしたが(正直、私もですが……)、「もう限界です。無理です」と言っていた部下が徐々に復活してきたのです。
それどころか気がつけば、こちらが要求した以上の動きをしはじめました。
ストレス研究の第一人者であるカラセックというスウェーデンの心理学者が、「仕事の要求度コントロールモデル」というものを提唱しています。
これは、「仕事の要求度」と「仕事の裁量度」によって仕事のストレスレベルが変わるというものです。
「仕事の要求度」とは、やらなければならない仕事の量、困難さ、納期のタイトさなどのことです。
「仕事の裁量度」とは、仕事をするためにあたっての自由度がどのくらいあるか、自分の判断で動かせることがどのくらいあるかといったことです。
そして、「仕事の要求度」が高く、「仕事の裁量度」が低いと一番ストレスフルな状況になります。
だからといって、「仕事の要求度」を下げて簡単にすれば、ストレスにならないかというとそうではありません。
裁量度の低いままでは、「やらされ感」は払拭できず、感じるストレスは決して低くない、という状況になります。
「要求度」が高い仕事でも「裁量度」が高ければ、ストレスを感じにくく、積極的に仕事に取り組むことができます。
仕事の要求度と感じるストレスは、必ずしも一致しないのです。
ここでもうひとつ重要なのは、上司や同僚からの支援です。
「仕事の要求度」と「仕事の裁量度」に「周囲からの支援」を加えた3つが、ストレスレベルを決める要素なのです。
つまり、「仕事の要求度」を高めざるを得ないときは、「仕事の裁量度」を高め、私たち「上司からの支援」も行うことが重要なのです。
自分で考え創意工夫する中に、学びと気づきがあり、それが成長へとつながります。
でも、最初から上手くいくわけではありません。
最初は、手厚く支援しながらやっていかなければならないのです。
私の失敗は、難易度の高い仕事を部下に丸投げし、判断は心配なので上司である自分が決めていました。
責任だけは取らせて、権限は委譲せずの状況です。
途中の報告は強要しますが、支援ではなく、成果のみを要求していました。
これは「無理です。限界です」と言われても仕方ありません。
部下に難易度の高い仕事を任せるときは、きちんと権限を委譲する。
上司である私たちはそれを支援していくのです。
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部下に発想の転換をすすめる
第7章 部下の「可能性」を広げ、目標達成させる【6】
この記事は、2014年発刊の大林伸安・著である書籍「目標達成し続けるリーダーの「できない部下」を「デキる部下」に変える7つのこと (アスカビジネス) 」を基に、メールマガジン「ノビテク通信」向けに再編集、配信した「目標達成し続けるリーダーの「部下」を育てる7つの基本」です。内容や名称、肩書きなどは当時のままとなっておりますことご了承ください。