目標を達成し続けるリーダーの部下を育てる7つの基本
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目標達成し続けるリーダーの「部下」を育てる7つの基本
第1章 部下との「スタンス」を見直す【4】
「部下が自分に何を期待しているのか、把握する」
私がこの人材育成業界に入ったとき、「師匠」と呼べる存在がいました。その方には、実にさまざまなことを教えていただきました。
その方はものすごい売れっ子コンサルタントで、いつもどこかの企業に出向いて講師を務めていました。そのため、会社に戻ってくるのは1カ月に数回で、「あの人は今どこにいるのか?」と皆が冗談を言うほど、飛び回っていたのです。
ところが、たまに会社に顔を出すだけなのに、その方は部下たちの心をきちんと捕まえていました。その秘密は、その方の「話しかけ方」にあったと思います。
「今どんな仕事をしてるんだ?」
「なるほどなるほど。それで?」
「それで、俺に何を期待してる?」
その方が部下に投げかけるのは、たいてい、この3つの言葉でした。まずは「今どんな仕事をしてるんだ?」によって、部下が自分のことを話せる状況をつくります。そして、続く「なるほどなるほど、それで?」で、相手の話に興味を持っていることを示すのです。相手が自分に興味を持ってくれると、どんな人でもうれしいもの。部下たちは、自然と自分たちの状況を話していました。
こうして部下の現状を確認した後、決め手となるのが
「それで、俺に何を期待してる?」
という言葉でした。
部下たちも、それなりの経験を積んだビジネスパーソンです。入社して間もない若手でもない限り、かなりの仕事は自分たちの判断で進められます。おそらく、全体の7〜8割程度は独力でこなせるでしょう。
しかし、残りの2〜3割については、上司の知恵や力を借りたいと思っているものなのです。それをきちんと把握することが、リーダーには大切なのだと、私はその方から学びました。
もし、部下から「この上司についていきたい」と思ってもらえれば、指導の効果は飛躍的に高まります。
では、ついていきたくなる上司の条件とは何か。
それは、「部下の期待にしっかり応えられる人」ではないかと思うのです。
普段は部下の自主性に任せる一方、大事なポイントで的確なアドバイスをしてくれる。そんな人が率いる部署なら、部下たちはのびのびと仕事に打ち込めるでしょう。
一方、普段からよく声をかけてくれるが、どこかピンぼけ。こちらがして欲しいことは一切してくれないという人では、部下もそっぽを向いてしまうでしょう。専門用語で言う「役割」と「役割行動」の不一致というやつです。
多くの人は、リーダーシップをリーダー固有のスキルだと考えています。しかし、実際はそうではありません。リーダーシップは、リーダーと部下の間にこそ存在するのです。上司がどんなに立派で優秀な人であっても、部下が「ついていきたい」と思わなければ、リーダーシップは発揮できないのです。
そこで大切なのは、最初に部下の期待をきちんと把握することです。
例えば、炎天下でのどが渇いている人に、パッサパサのバウムクーヘンを差し出しても喜ばれませんよね。そのバウムクーヘンがどんなに高級でおいしいものでも、相手が求めていなければ無意味。それより、水道水でいいから水を手渡す方が、ずっと喜ばれるでしょう。
それと同じで、
相手の期待をきちんと理解してから行動することが、何より大切なのです。
部下が上司に期待する役割と、上司が果たそうとする役割が一致しないのは、どちらにとっても不幸です。リーダーの皆さんにとって、「私に何を期待しているの?」と聴くのは、かなり勇気がいる行動かもしれません。しかし、これをはっきりさせることで、「肝心なときに頼れる上司」を目指せるのです。
勇気を持って部下に「私に何を期待してる?」と聴いてみる。答えがすぐに返ってくるかどうかは分かりません。でも、聴いてみることが大切なのです。
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感情的になった部下を受けとめる
第1章 部下との「スタンス」を見直す【5】
この記事は、2014年発刊の大林伸安・著である書籍「目標達成し続けるリーダーの「できない部下」を「デキる部下」に変える7つのこと (アスカビジネス) 」を基に、メールマガジン「ノビテク通信」向けに再編集、配信した「目標達成し続けるリーダーの「部下」を育てる7つの基本」です。内容や名称、肩書きなどは当時のままとなっておりますことご了承ください。