目標を達成し続けるリーダーの部下を育てる7つの基本
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目標達成し続けるリーダーの「部下」を育てる7つの基本
第3章 部下に上司の「姿勢」を見せる【5】
「逃げない姿勢を見せる」
私には、この業界で唯一頭の上がらない元上司がいます。
まだ研修コンサルタントとして駆け出しだった頃です。
あるお客様に頼まれるがまま、過剰サービスをしてしまったことがありました。そのことで、元請けの会社から「言われたこと以外やるな」と叱責を受けたのです。
私はそのことを、当時勤めていた会社の女性社長に報告しました。するとその人は、元請けのところに一緒に謝りにいってくれたのです。
元請けの担当者には、ねちねちと文句を言われました。ところが私は、全く納得できませんでした。もともと、お客様のためになると思ってやったこと。また、実際に喜ばれもしましたし、元請けの会社に損をかけたわけでもありません。もちろん、違法なことをしたわけでもない。それなのに、どうしてここまで言われるのかと、内心納得がいかない思いでした。
そのうちに、その担当者の矛先は社長に向きました。私の上司として、監督責任があるだろうというのです。
「私の指示でやらせました。全て私の責任です!」 と言って頭をさげたのです。
実際は、私の一存でやったことでした。社長にしてみれば、その日の朝、私が報告してはじめて知ったことです。しかも、その元請けは、売り上げの7割を占めるほどの大切な相手でした。私一人の責任に押しつけてしまった方が、会社としてはきっと安全だったはずです。でも、彼女は一瞬の判断で、会社ではなく、私を守ってくれたのです。
社長と一緒に帰社する途中、私は地下鉄の座席に正座し、土下座しました。そのとき、彼女が私に向けてくれた笑顔と言葉は、今でもくっきり覚えています。
「今回はいい教訓になったでしょ。さあ、気持ちを切り替えてがんばっていこう」
このとき、この人には一生頭が上がらないと思いました。
私が会社を創設し、社長になったときに誓ったのは、「部下を絶対に守る」ということでした。私が当時の社長に守ってもらった恩は、部下を守ることで返す。そんな風に思ったのです。
「話を聴いてくれる人」「ほめてくれる人」「育ててくれる人」そして「責任を取ってくれる人」です。
当時の社長は、まさに「責任を取る」リーダーでした。
部下は自分の代わりに、何もかも責任を取って欲しいと思っているわけではありません。責任から逃げず、部下のミスを「人ごと」ではなく「自分ごと」として捉えて欲しいのです。
問題やクレームから逃げない、問題が起こったら一緒になって対処する、一緒に謝りにいく、一緒に考える、このようなことが求められます。叱責してもいいのです。ただ、「部下を守る」という最後の一線だけは、絶対に守る。その姿勢が大切です。
上司の上司だってバカじゃない。こいつは部下を見捨てたな、というのは分かってしまいます。
上司と部下を並べて叱責したときに、保身に走って、部下が勝手にやりました、と言うのは百害あって一利なしです。自分が処分されても、私がやらせました、彼には責任はありません、と部下を守る方が、部下は少なくともこの上司についていこうと思うし、上司の上司も信用できると思うはずです。
部下は、自分を見捨てるようなリーダーには、絶対についていきません。何があっても部下を守るという姿勢は、部下の信頼を得る上で何より大切なものです。
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公平な姿勢を見せる
第3章 部下に上司の「姿勢」を見せる【6】
この記事は、2014年発刊の大林伸安・著である書籍「目標達成し続けるリーダーの「できない部下」を「デキる部下」に変える7つのこと (アスカビジネス) 」を基に、メールマガジン「ノビテク通信」向けに再編集、配信した「目標達成し続けるリーダーの「部下」を育てる7つの基本」です。内容や名称、肩書きなどは当時のままとなっておりますことご了承ください。