目標を達成し続けるリーダーの部下を育てる7つの基本
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具体的な表現で指示ができるようになるためには、言語化するスキルが必要です。上司が勘所を抑えているのは長年の経験があるからです。部下は勘所がわからないため、管理職こそ、経験や仕事を振り返り、言語化するスキルを身につけましょう。
目標達成し続けるリーダーの「部下」を育てる7つの基本
第4章 言葉にして「想い」を明確に伝える【3】
「必要なスキルや知識を言語化して伝える」
読売ジャイアンツの元監督・長嶋茂雄さんと、元メジャーリーガー・松井秀喜さんの師弟関係は有名です。松井さんがジャイアンツからニューヨーク・ヤンキースに移籍し、スランプに陥ったとき、長嶋さんはわざわざニューヨークに出向いてバッティング指導までしたそうです。
その際の長嶋さんの指導法は、とても感覚的な表現だったと聴いたことがあります。例えば、「松井、バットは『ブン!』じゃなく、『ビュン!』と振れ!」などのように教えたというのです。
2人は天才スラッガーです。そして、強い師弟関係で結ばれてもいます。だから、「ブン」とか「ビュン」という表現でも、十分に意思が通じ合うのでしょう。
しかし、ビジネスの世界でこれをやったら大変です。部下に「営業は、ドカーンとぶつかってキュキュッとまとめればいいんだ」と指導しても、相手はきっとポカーンとしてしまうでしょう。
こういう感覚的な言葉を使ってしまう管理職は、意外に少なくないものです。そして、そういうタイプの人は、部下から細かい説明を求められてもうまく答えられません。そして面倒になり、「やっていればそのうちできるようになるから!」などと突き放してしまうのです。
当然、部下はどう行動すればいいのか分からず、成長することができません。
実は、私自身も「そのうちできるようになる」式の指導をしてしまった経験があります。 あるとき、私は後輩の商談に同行しました。そして、商談帰りに「あそこでちゃんとクロージングしなきゃダメだよ」と助言したとき、「あそこってどこですか」と後輩から聴かれたのです。
私自身はどちらかといえば感覚派で、当時は自分の営業ノウハウを言葉にするのが苦手でした。そこで、つい「なんで分からないんだよ! まあいい、そのうちやってりゃできるようになる!」とイライラして答えてしまったのです。後輩からすれば、全く具体性のない指導で途方に暮れたことでしょう。
営業の仕事に慣れると、どこでお客さんにクロージングをかけるといいかが、感覚で分かってきます。でも、経験の浅い人には、その勘所が分かりません。
ですから、きちんと言葉にして伝えなければならないのです。
例えば、「お客様が値引きの話題を出してきたらチャンスだ。それは、商品を買う気が高まっている証拠。だから、すかさず納品後のスケジュールなどを持ち出して、商品を買った後のイメージを膨らませてやると効果的だぞ」などのように、具体的にアドバイスしなければならなかったのです。
顧客のどこを観察するか、どういう反応があったらどのように提案すれば効果的なのかなど、必要なテクニックを言葉にすることがポイントです。そのためには、自分が行っている仕事を振り返るといいでしょう。
普段は何気なくやっていることを、「なぜ、私はこのタイミングで、こんな行動をとっているのか?」と分析すれば、部下を指導する際に大いに役立つはずです。
どんな人でも場数を踏めば、「そのうちできるようになる」のは確かです。でも、そうやって自然に上達するのを待っているのでは、長い期間がかかってしまいます。
それより、自分の持っているノウハウを言語化し、積極的に伝えてあげましょう。そうすれば、より短期間で部下は成長できるのです。
そうはいっても、具体的に知識やスキルを言語化するのは簡単ではありません。そこで一度、時間を取って業務マニュアルをチームのメンバーと一緒に作成することをおすすめします。
社内勉強会と称して、メンバーみんなでつくると各自が持っているノウハウの共有にもなるので一石二鳥です。マニュアルを作成するときには、仕事がまだ未成熟な新入社員が読んでも分かるように、簡単な言葉と業務フローに沿って作成するのがポイントです。
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3パターンで伝える
第4章 言葉にして「想い」を明確に伝える【4】
この記事は、2014年発刊の大林伸安・著である書籍「目標達成し続けるリーダーの「できない部下」を「デキる部下」に変える7つのこと (アスカビジネス) 」を基に、メールマガジン「ノビテク通信」向けに再編集、配信した「目標達成し続けるリーダーの「部下」を育てる7つの基本」です。内容や名称、肩書きなどは当時のままとなっておりますことご了承ください。