What's YARERUKI?

やれる気のミナモト

細かい変化に左右されず大きな変化をとらえる。過去を分析し、現在を把握して、未来を予測する。

宮沢 修二 氏

宮沢 修二

株式会社ラーニング・アーキテクチャ研究所 代表取締役

※役職はインタビュー当時のものです。

ずばり仕事を楽しくさせるコツはなんでしょう?

一つ目は「人に強制されていないこと」、自分で選んでいるということです。二つ目は「初めてのことをやる」ということ。成功体験のないものに挑戦する時はワクワクしますよ。たとえば、一人目の子供が誕生する時はとてもワクワクするけど、二人目はそれほどでもないでしょう?(笑)三つ目は「自分に関連のあること」のほうがいいですね。

だから逆の立場にたって、仕事を指示する場合には、相手にそう思ってもらうようにこの三つに気をつけるようにしています。仕事に重きを置かないで、アフターファイブを充実させるという考えの人もいるので、それはもちろん否定しないですよ。でも、仕事を楽しくしたいならこれは重要です。

会社組織の一部署にいる人はいろいろと制約があると思うのですが、その場合はどうしたらいいですか?

三つそろわなければ、どれか一つでも実現するようにすればいいですよ。または100%じゃないけれど、三つともそこそこそろえるとかね。今は自分の意志でやりたいことが言える会社が増えているのですから、そういう会社を選ぶことです。上司は選べませんが会社は選べるからね。まず職を選んでそれから会社を選べばいいんです。

大学4年生に戻っていただいて、その時の気持ちを聞かせていただけますか?

私は中央大理工の化学出身ですが、マスターは先生を選んで大学を変わりました。やりたいことがあったので研究室の先生に聞いたら「うちではその分野は教えないから」と言われ、他の大学の教授を三人ぐらい紹介してもらったのです。その中から日大大学院の理工を選びました。大学では環境問題を勉強し、大学院では接着剤の研究をしました。それで、1年助手をやって、それから接着剤を作っている会社に入社ました。

なるほど、そこから職業人生が始まるのですね。続きを教えてください。

その会社では、マスター新入社員一号だったのですが、1年で辞めてしまいました。接着剤って極めていくと試行錯誤になってしまって、これじゃ、新製品開発できるかな?と疑問を持ってしまいました。
たとえばガラス二枚は水でピタッとくっつくでしょ。あれは水が接着剤になっているからです。でも片方を曇りガラスにしたらどうでしょう。きっとくっつかないと思います。そんなふうに条件が変われば状態は変わるんです。夏と冬のように気温によっても状態は変わると思うし。つまり一番くっつく接着剤を探すのは大変なことなんです。毎日ひたすらモノをくっつけることをしていましたが、これじゃいくらやっても新しいことはできないなと思い、ある日、それだったら「人をくっつける仕事」をしようと思ったわけです。

それで、ヒューマンネットワーク会社に転職しました。今でこそ、異業種交流会などいろいろありますけど、1980年代当時としてはめずらしかったので、人に説明するのは苦労しました。ネットワークの中から情報のカオス状態を作って新しいビジネスを創出しようというのが目的です。今で言うインキュベーションをヒューマンネットワークによって作り出そうとしたのです。小さい会社でしたから、総務から経理から何でも経験できました。

比較的自由にできたのは良かったですね。その中で一番の成功は情報処理技術者の通信教育事業です。誰か一緒にビジネスをやってくれる会社を探している人がいて、見つけたんです。でも、紹介するのはもったいない、おもしろそうだから自分たちのところでやろうかということになりました。幸いにも院生で接着剤の研究をしていた時にメインフレームでデータの解析をやっていたので、多少コンピュータの知識もありました。初年度でいきなり8000人来て2億売り上げましたから、今の6億くらいの価値はあるんじゃないかな?これが教育との出会いです。

異業種で人に出会うと、異なった情報が結びついて、新しいビジネスアイデアが出てきますから異業種交流は重要です。転職して、しばらくたったとき、IT業界はいろんな業界の情報システム化をするんだから、きっと新しいアイデアが出てくるかな?と思ったんですが、実際は違いました。IT業界のエンジニアも一般企業の担当者も、結局コンピュータ村に住んでいて、情報が同質で、新しい発想がしにくいのが分かりました。

異業種で結びついておもしろいなあと思ったのは在庫管理の方法についてです。どんな企業でも、やっていますが、翌日に持ち越せない在庫というのがあるんです。たとえば、「電車の座席」がありますが、余ればロスになるし足りなければ機会損失になります。どうやって売っていると思います?実はJRなんかの場合、フロントでさばけるように車掌に持たせていたりするのですよ。またホテルの部屋についても同様。宴会などを除けば、フロントの売り方で部屋の埋まり方が異なります。終電を乗り過ごして予約なく一人で来た客にスイートルームやツインのシングルユースを紹介したりして。他の業界でも同じような在庫管理の方法ができないものかと思いました。ビジネスには共通性がありますが、横に並べてみないとなかなかわからないものです。

その会社を辞めるとき、最後の10年は何をしようかと考えた結果、研修事業が変わらないといけないなと思い、「研修の結果に責任を持つ業界にしたい」と思ったんです。3年前のことです。
当時はみんな「難しいよ」と言っていましたが、今は「結果出さなくていい」なんていう研修はありません。そのためには仕掛けを作り、もちろん商品開発もします。提供側も結果を計れる手段を持たないといけません。つまり、そうした学習の仕組みを設計する人を「アーキテクト」と呼んでいます。
でも、私のテーマはやっぱり異業種です。「なんで同じことを違う風にやっているのか」考えただけでも単純におもしろいですよ。

若い人(20代の人)に今やるべきことを教えてください。

将来50歳くらいの時点で一度定年を迎えるとして、これからの30年間を3年で一区切りと考えてはどうでしょう?10回変わるということを前提で生きるのです。それをまた3サイクル(9年)で考えるとかね、今からそういうことを考えながら生きたら楽しくなるのではないでしょうか。

そして「変わる」ということについては、一つ目は「変化を読む」。
二つ目は逆のことを言うようだけれども「早ければ早いほど変化は無視しろ」ということです。早い変化を追いかけても追いつきませんから、細かい変化に左右されず大きな変化をとらえるようにします。予測して待つ姿勢も大事です。それには歴史を見て3点をとらえることです。過去のデータ分析をし、現在を把握すれば、未来の予測も可能ではないでしょうか?