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  3. NO.3 税理士 鈴木恵子氏

失敗したっていい、その経験が
判断の素早さにつながる。

鈴木恵子 氏
税理士
鈴木恵子氏
Q.最初から税理士を目指されていたのですか?
いえいえ、全然!実は高校時代に好きな男の子と同じクラスになりたくて理科系を選んでしまい、そうしたら大学受験で農学部か薬学部しか行くところがなくなってしまったのです。(笑)そしてたまたま農芸化学科に行くことになりました。
私の就職時はバブル絶頂期。「何がやりたいか」ではなく「どれだけ有名な会社に行くか」を考えるような時代でしたから、私もそんな感じで選んでいましたね。それで最初に決まったのが水産会社でした。しかも水産業で女性初の営業職!「かっこいいから」という理由で準総合職として就職することになりました。
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Q.なぜ水産を選んだのですか?
食品の中ではビジュアルによって花形部署の冷凍食品などから決まり、体力勝負は畜産または水産だったんです。それで私は水産にエントリーされたというわけです。(笑)
担当はタコと甘エビとししゃもでした。結構大変な経験もしたんですよ。生協の宅配への納品時間に間に合わず欠品してしまったことがありましてね。そのときはお客さんの指示に従って、-28度の冷蔵庫内で女子二人で甘エビを箱詰めしました。今ではいい思い出ですけれども。それから営業一筋4年半!やっているときは嫌なことも多々ありましたが、今思えば楽しかったですね。
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Q.営業の面白みってどんなところですか?
なんといっても人との接触が多い仕事だから“本当のお客さん”になってくれたときですね。
当時銚子のスーパーに月1回通っていました。そこのおじさんに「たまにはクリスマスとかに男の人から赤いバラの花束なんてもらいたいわよね~」と何気なく言ったことがあり、それをずっと覚えていてくださって、退職のときに真っ赤なバラの花束をそのお客さんが贈ってくれたんです。「鈴木さんと商談するのがとっても楽しかった。ありがとう」って。それは嬉しかったですね~。商談の前日には商品と睨めっこしながらトークをアレコレ考えてから行くようにしていましたから、それを楽しみにしていてくれたんですね。「お客さま商売っていいなあ」と心から思いました。
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Q.面白みもわかりはじめた27歳のとき、転職を考えられたそうですが?
鈴木恵子 氏もうバブルが崩壊した後で、大学の同級生も子会社に出向になったり、不本意な部署への異動があったりなど、リストラの足音がヒタヒタと聞こえてきたんです。
そのような環境の中で、私は手に職がないことから、将来に不安を感じていたんです。そんなときに友達に誘われたことがきっかけで、軽い気持ちで税理士の学校に通い出すことになりました。簿記は全くの初心者でしたよ。だって資本金は本当に金庫に入っていると思っていたくらいなんですから。こんな風に話していると、私って周りに流されている人生だなあと感じますね。(笑)
一応仕事と両立して7ヶ月間通い、当然だけど最初の試験では惨敗。そこで、会社を辞める決心をし、その年の9月に退職することにしました。それからは勉学に専念したので、受かるのが先か、貯金がなくなるのが先かって感じでしたね。
もちろん辞めるには勇気がいりましたよ。でも当時は自分探しがブームだったんですね。何かの雑誌か本に次のように書いてあったことで、決心がついたんです。
「何かを得たければ、まずは持っているものを捨てるべきだ。新しいものを本当に求めるならばリスクを背負わなければならない。」
逃げ道があると、怠け者の私は必ずそこに転がり落ちていきそうで。いつまでも受からないような気がしたので、だからあえて自分で道を断ち切ったというわけです。
その後2年間勉強し、4科目合格して1科目合格待ちの状態で某大手会計事務所に応募しました。最終面接まで残ったのだけれど、落ちてしまって。そのときにたまたまそこから独立して会社を立ち上げたばかりのある社長から電話がかかってきて、「うちはどうですか?」と声をかけてくれたんです。当時は社長しかいない本当に立ち上げ時だったので、とにかく考える余裕もないくらいに忙しかったですね。後に30人くらいの大きな事務所になりましたけれども。PAGE TOP
Q.そこで得たものってなんですか?
やはり仲間かな。今でも半数くらいの人たちとは交流があります。みんなそれぞれの道に進んだけれども、何かあったときには質問できるし、仕事で大きな案件が来たときには一緒にできたり、ときにはお酒を飲んだりしています。PAGE TOP
Q.鈴木さんの税理士としてのモットーは?
鈴木恵子 氏流されやすい性格なものですから、その都度違っているような気がします。最近は、インフォームド・コンセント(説明を受けたうえでの同意)を心がけるようにしています。クライアントにご自身の申告内容を少しでも理解していただければと思いまして。リスクはリスクとして説明します。
また、昔培った営業の精神で月1回は顧問先には行くようにしています。会社の中もよくわかるし、ひょんなことから想定外の質問も出たりして。顔を合わせることはクライアントと信頼関係を築くうえでとても大事なことだと思います。
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Q.「士業」の方は講師業が中心の方もいますが、鈴木さんは?
私はお客さんと一緒に現場で汗を流すことが好きなので、講師業よりも実務派ですね。税務顧問としても、上から指導するというよりは、一緒にやりとげて一緒に喜ぶことが楽しいと思っています。お客さんには「鈴木さん」と呼んでもらっているんです。「先生」と呼ばれちゃうとサービス業の精神がなくなっちゃいますからね。 PAGE TOP
Q.仕事を楽しくするコツがあれば教えてください。
やっぱり仲間ですね。一緒に仕事の案件を持ち寄って、相談しながらできることが楽しいし、仲間には本当に助けてもらっています。現在のお客さんも仲間から紹介してもらった人が多いんですよ。独立してまだ9ヶ月なのに、お陰さまで毎日忙しくしています。PAGE TOP
Q.20代の若者に一言お願いします。
鈴木恵子 氏会計事務所にいたときの話ですが、入ってきた新人が、分からないことがあると調べもせずに効率ばかり考えてすぐに私に質問してきたんですね。答えてしまうのは簡単だけれど、それが積み重なると自分では絶対に考えない人になってしまうでしょ。だから「間違っていてもいいから自分なりの意見を持ってきなさい」ってかなり厳しく指導しました。なぜなら税の場合は私が100%正しいとは限らないからです。範囲は広いし条文の解釈の問題だから。よくよく調べたら新人の意見があっていることだってあり得るんです。1人の凝り固まった考えで進めてしまうと失敗することもあるから、みんなにちゃんと考えてもらわないと私としても困ってしまうんです。
だから、若者に言いたいこととしては「みんな失敗を恐れて正解を先に先に求めるという傾向にあるけれど、なんで君たちはそんなに失敗を恐れたり急いだりするの?失敗したっていいし、その考える過程が重要なのよ」ってことかな。そういう経験がその後の判断の素早さにつながるはずですから。
あ、そうそう、水産会社の部長がおっしゃっていたことですが、ラグビーでは同じパスを何度も練習するそうです。なぜならば咄嗟の判断で無意識に体が動くようになるためなんですって。それは税務も同じ。自分がちょっとでも不安だなと思ったことは必ず条文まで戻って調べるのを繰り返していけば、パッと聞かれたときにちゃんと答えられるようになると思います。わかっているような気になって、軽い気持ちで答えず、その都度ちゃんと調べるようにすることが大事ですね。
あとはとにかく悩んでないで動いてみること!私だって最初は独立志向なんて全然なかったんだから。とりあえず動いてみればきっとどうにかなるものです。PAGE TOP