- Q.今までの経歴を教えてください。
- 昭和40年に大学を卒業して北海道拓殖銀行に入社しましたが、3年目の人事部との面接で、銀行はスペシャリストを求めていない、ジェネラリストを求めているといわれ、それがきっかけで、転職を本気で考えるようになりました。昭和42年に英検1級に一発合格していたので、英語を活かせる職場ということで外資系の住友スリーエム株式会社に転職をしました。入社してセールスへ配属されました。マグネティックテープ「カンタータ700」という商品の販売でしたが、3日間教えてもらって、4日目からは即販売活動に出されましたね。1年も経たないうちに、東北と北海道を一人で担当することになり、毎月3週間ディーラーと同行営業をしては本社に戻るという生活でした。その後札幌支店ができて転勤しました。
住友スリーエム株式会社には今から40年以上も前にすでにマーケティング担当がいたんですよ。しかし当時はまだ営業のアシスタント的な性格が強かったようです。
その後私はシンガポールやタイなどアジア・オセアニアの海外セールス担当を経て、国内のヘルスケア部門の担当になりました。医療用製品のマーケティングをする部署です。ここから私のマーケティング人生が始まります。
マーケティングの仕事というと、調査とか広告というイメージが大きいですが、簡単に言うと売れる仕組み作り全般を指します。どのようなポジショニングでどのセグメントを狙うかという戦略に基づき、新製品の価格設定、カタログやセールスマニュアルなど販促ツールの作成から、セールスプロモーションの策定、営業マンの指導まで、時にはディーラーと一緒に客先をまわることもあります。実は幅広い仕事なんですよ。
そして、この会社では最終的には歯科用製品のマーケティング室長となり、21年間いたことになります。
47歳のときに退職し、その後はヘッドハンティングによりいくつかの会社を経験しました。
そんな中、世間で通用できそうな資格があったほうがいいなあと感じ、JETRO認定貿易アドバイザーを取得したのです。また商業英語Aクラスもトップ合格しました。
54歳でコンサルタントとして独立し、これまで企業の営業・マーケティング・経営戦略のコンサルや、社員のマーケティング研修などをやってきました。現在は日本大学大学院 グローバル・ビジネス研究科で、技術マーケティングとコンペティティブ・インテリジェンスのクラスも受け持っています。
若いときから特に独立志向があったわけではないんですよ。たまたま大学時代の人脈などで紹介をいただき、徐々に定収入が増えていきました。
でもまだまだマーケティングについて必要性を感じている企業は少ないと思いますよ。本当はマーケティングと経営戦略は表裏一体なんですけどね。 - Q.マーケティングは大変人気職種ですが、向いている人はどんな人ですか?
- 好奇心がある人、前向きな人、成果にこだわって何かを作り上げようとする人、競争心を持って「どうしたら勝てるか」を考えられる人、などですね。与えられたことだけやっているようでは務まりません。
- Q.岡村さんの最近の訳書の題名にある「CI理論」とは何ですか?
- CIとはコンペティティブ・インテリジェンスの略です。「競合が何をやっているのか」「技術のトレンドは?」「顧客ニーズはどのように変化するか」「どんな規制あるいは緩和が出てくるのか」など、経営環境、市場、顧客、技術、競合などに関する外部情報を組織的に収集・分析し、それを意思決定や戦略に活かす体系的なプログラムのことです。細かく分けて統合して、そこに意味を見出すところがインフォメーションとインテリジェンスの違いです。
「競争戦略~勝ち抜く企業のCI理論」ベン・ギラッド著 岡村亮訳 - Q.企業においての仕事のやりがいは何ですか?
- 成功体験をさせてもらったことですね。圧倒的なシェアを誇る競合に、新しい技術と製品をぶつけ、市場のリーダーになったことは大きな喜びでした。またアメリカのセールスマンとの同行営業や、世界中の医療の専門家とマーケッターが集まりリゾート地で開催される国際会議はよい経験になりました。
- Q.ではさらに、仕事を楽しむコツがありましたら教えてください。
- 一つ目は自分で考えたことを実行することですね。与えられた新しい環境をいかに活かして楽しむかです。新しい環境でも自分の得意分野やできることを考えると結構あるものです。
二つ目は若いうちにスペシャリストを目指すことです。私の場合はマーケティングと英語ですが、二つあるとベターですよね。わからなければ、トライアル&エラーあるのみです。 - Q.最後に若者にアドバイスをお願いします。
- 組織の文化や慣習に流されがちになりますが、自由に何かやってみてください。もしかしたら足を引っ張る人がいるかもしれませんが、やるべきことをしっかりやっていれば、必ず見ている人がいます。とにかくあきらめないことです。